前半記事の続きになります!
【前編】鎌倉時代から560年続く名家『田部家』で提供するガストロノミーイベント@島根県雲南市
■魚料理 ヤマメのファルス
きすぎバターのブールブランソース
魚料理には「芦谷峡 やまめの里」で獲れたヤマメと、木次乳業のバターを活かした一品。
春に差し掛かり旬を迎えたヤマメを三枚に卸し、シャンピニョンデュクセルを挟み、吉田村で採れたほうれん草で包み込みファルスに仕立てます。
「芦谷峡 やまめの里」は雲南市の芦谷狭はブナの原生林の中にあり、清流が流れるところに釣り堀を展開されています。
ソースに使用した「木次バター」は前述の木次乳業のバターを使用。
牛乳の風味がしっかりと感じられ、優しいバターです。
このバターでクラシックなフランス料理、酸味の効いたブールブランソースで召し上がっていただきました。
このペアリングには地元の日本酒をペアリング。
田部家が所有する酒造『田部竹下酒造』の日本酒を2種類ご用意され、
用意していただいたのは2023年から立ち上がった新ブランド「理八」の「純米吟醸 酵母901号」と「純米吟醸 酵母1801号 生酒」の2種類を提供しました。
日本酒は醸造過程で乳酸が豊富に含まれるため、ブールブランのようなバターのソースにはとても合わせやすいです。そんな日本酒を贅沢に2種類、グラスを変えてペアリングしていただきました。
「純米吟醸 酵母901号」は旨味と華やかな香りのバランスが魅力で、白葡萄や柑橘の甘い香りと口クリアで軽快な味わいの造り。
こちらはたたら製鉄で製造された玉鋼という非常に純度の高い鋼を使用したおちょこで提供。
とても貴重な鋼でずっしりとした重みがあり、口元はとても薄く仕立てられたお猪口で、ひんやりとした質感とともに飲んでいただきました。
「純米吟醸 酵母1801号 生酒」は生酒ということもありフレッシュで華やかな香りが魅力。白桃や蜜りんごを思わせる香りが立ち上り、まろやかな飲み口でありながら軽快な切れ味が特徴。
この『理八』のシリーズは“ワイングラスでおいしい日本酒アワード”【プレミアム純米部門】最高金賞を受賞した「奥出雲前綿屋 試験醸造 純米吟醸」の試験仕込み期を経て再度仕込み配合・工程を見直し、「理八」ブランドとしてリリースされたもの。
こちらは実際に日本酒をワイングラスで飲むことで生酒特有のフレッシュな香りを楽しんでいただきました。
この日は現在杜氏を務めている濱崎良太さんもいらしており、酒造りを牽引するご本人直々にご紹介をいただきました。
■肉料理 骨つき猪肉の塩釜焼き 雲南山椒の香り
アミューズで紹介した鹿糠さんの猪の背肉を骨つきのまま塩釜で包み焼きにした一品。
たたら製鉄の『釜』にインスピレーションを受け、小川シェフは塩釜焼きを考案。
塩釜でじっくりと火を入れた猪肉は、お客様の前でデクパージュしていきます。
丸ごとローストされた猪肉を前に、参加者の皆様からは感嘆の声がたちまち上がりました。
塩釜を切り分け、骨ごとに猪肉をカットし、1人前ごとにお皿に盛り付けていきました。
塩釜焼きの猪肉には名産の雲南山椒を共に包み焼き、ソースにも山椒の香りを効かせて地元食材の魅力をこれでもかというくらい詰め込みます。
コンソメを引くときに使用した猪のブイヨンに山椒を加えた赤ワインソースと、
田部家の畑で育てられた蕪をローストし、木次バターでブールフォンデュ。
根セロリピューレ、食感にカリカリに焼いた舞茸ロースト。
塩味の強く感じやすい塩釜焼きの塩味を和らげる木次バターと蕪の甘みに、舞茸の食感も合わせるなど、小川シェフの引き出しもここで存分に発揮されます。
ここにペアリングしたのは奥出雲ワイナリーの『小公子 2016』
日本古来から自生しているヤマブドウ系の品種であるブドウ品種”小公子”は非常に小粒で、厚い果皮と種に由来するしっかりとした酸味とタンニン、野生的な風味が特徴です。
酸味とタンニンの高い小公子は熟成と共に柔らかい印象になっていくため、8年間熟成された小公子は果実の甘酸っぱさとともにクローブやブラックペッパーなどのスパイスの風味を持ちます。
ここではノンアルコールドリンクも奥出雲ワイナリーのブドウジュースを使用した赤ワイン風ドリンクを提供。
ブラックオリンピアと山葡萄を使用したブドウジュースをベースに紅茶、ローズヒップ、クローブなど様々な素材を組み合わせたドリンクは甘みを抑え、料理と同じく雲南山椒を加えてヤマブドウらしい野生的な味わいを表現しました。
■デザート
彩り天佑卵のウーアラネージュ
最後に用意したのは、奥出雲の平飼い鶏の卵『彩り天佑卵』を使用したウフアラネージュ。
田部グループが経営する『たなべ森の鶏舎』が育てる平飼いの八雲鶏が産む『彩り天佑卵』は、黄身が濃厚なブランド卵。
地元農家の野菜を発酵させた餌を食べさせたり、平飼いで飼育を行うことで清潔かつ健康に育てられることで上質な卵を産みます。
今回のデザートのウーアラネージュとはフランス語で「ウー=卵」「ネージュ=雪」と名前が示す様に、泡立てた卵白のメレンゲを使ったフランス発祥のデザート。
彩り天佑卵の卵白はメレンゲに、濃厚な黄身はアングレーズソースにし、うふあらネージュには定番のキャラメルソース、アーモンドスライスを添え、こちらも古典的なフランス料理のデザートに変貌します。
非常にしっかりとした味わいの天佑卵の味わいを際立たせたいという思いから、デザートは軽く、風味の感じられる仕立てに用意されています。
この時のデザート用のスプーンにもお猪口と同じくたたら製鉄の玉鋼を使用したスプーンを用意してくださいました。
デザートでも『たなべ森の鶏舎』の責任者を務める福留さんからのご挨拶をいただき、田部長右衛門氏にも声をかけ、地域一丸となってこの雲南を盛り上げようという気迫を感じさせられた。
様々な料理と食材・ドリンクと紹介させていただいたが、その他にも沢山の方々のご尽力をいただいてるので紹介させていただきます。
食中のパンには、自家培養酵母・国産小麦・釜焼きにこだわった「釜焼きパン アルム」さんのバケットとライ麦パンの使用。
メインディッシュの肉の一品には『森山ロクロ工作所』の森山さんが作る、地元・出雲産のけやきを使用したウッドボード。一枚一枚丁寧にろくろで削った木を、漆を塗って今回のイベントのために用意していただきました。
山で獲れる猪を、同じく島根の山林で採れた木と共に提供するという趣向で料理を彩っていただきました。
食後のコーヒーには松江市でスペシャリティコーヒーにこだわる「イマジンコーヒー」さんのグァテマラ産の中煎り豆のコーヒー。
ウフアラネージュと共に提供させていただきました。
本日のドリンク
ウヤマ・スパークリング 2023 / 奥出雲葡萄園
シャルドネ スパークリング / 奥出雲葡萄園
ピノグリ 2023 / 奥出雲葡萄園
シャルドネ 樽発酵 2022 / 奥出雲葡萄園
理八 純米吟醸 酵母901号 / 田部竹下酒造
理八 純米吟醸 酵母1801号 生酒 / 田部竹下酒造
小公子 2016 / 奥出雲葡萄園
奥出雲葡萄園 オンラインショップ
田部竹下酒造
編集後記
以上が田部家でのイベントで提供した料理でした!
これまでも長野、佐賀、福岡、兵庫とイベントを行なってきましたが、過去最大級と言ってもいいほど気合の入った会場設計にはとても驚かされました!
料理もほとんどの主要食材はどれも近隣の生産者のものを使用していて、その生産者様に料理を直接提供するというのもとても面白い体験でした。
山もあれば近くに海もあり、隠岐牛、島根牛と言ったブランド牛も飼育されていること、さらには宍道湖で採れるシジミなど、食材の豊富さと個性を強く感じさせられました。
空港からの道のりでは控えめな土地に感じていましたが、出雲大社にも訪問させていただいて近隣のお店が栄えていたり、
松江の街も魅力的なお店があるの見つけたり、
奥出雲葡萄酒、田部竹下酒造の見学もさせていただいた中で、
なんて力のある街なんだろうと、私自身も楽しく過ごさせていただけました!
イベントでの皆さんの様子も見ていて、地域の結束力も強いことが感じられて、この先また出雲が盛り上がってくるのが楽しみになりました。
nocsでは不定期でこう言ったイベントに参加し、地域の発展を盛り上げています!
興味のある方はぜひまたnocsのホームページを覗きにきてください!
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