重要文化財『旧吉原家住宅』でディナーイベントを実施しました!@福岡県大川市

重要文化財『旧吉原家住宅』でディナーイベントを実施しました!@福岡県大川市

1月中旬のある日、nocsの代表である小川シェフを筆頭に、出張料理人の福崎さん、フリーランスソムリエの園部さん、福井県のレストラン『LULL』でシェフを務める高橋さん、ライター(元パティシエ)の江戸で、福岡県大川市に行ってきました!

▲大川市にある国指定重要文化財『筑後川昇開橋』

大川市は福岡市から車で1時間ほど、福岡県と佐賀県の県境にあるまちです。

『大川家具』というワードを聞いたことがある方もいるかもしれませんが、日本有数の家具産地としても有名です。
筑後川を使って木材が運ばれており、良質な木材を手に入れやすい土地だったこと、技術を持った船大工がいたことなど、さまざまな背景があって、家具作りが盛んになっていったそう。

今回訪ねたのは、大川市の小保という地域。
今、この地ではまちおこしの取り組みが進んでおり、空き家をカフェレストランにするための改修工事も行われています。
小川シェフはそのお店のメニュー監修などを行っており、そのご縁で、同じ地区にある重要文化財を使ったディナーイベントに呼んでいただきました。
今回のディナーでは、大川市や有明海周辺の地元食材をふんだんに使ったお料理を提供しました。

会場は国指定重要文化財『旧吉原家住宅』

今回の会場は、大川市にある国指定重要文化財『旧吉原家住宅』。

こちらは柳河藩小保町において、代々別当職を務めた吉原家のお家。
庄屋さんという言葉は聞いたことがあると思いますが、庄屋が村のトップなら、別当は町のトップといったイメージだそう。
つまり、現代で言えば町長さんのお家ということですね。
かつては役場の機能も担っていて、町の人が年貢を納めに来たり、幕府から遣いが来たりしていたそうです。

そして、この敷地内にある蔵でディナーを提供しました。

せっかくなので、到着後はまず地元ガイドの方に説明していただきながら、旧吉原家住宅の見学をしました。

上質な木材を使い、高い技術力を駆使して作りあげられたことがわかる部分が随所に見られ、この建物の素晴らしさに感心しきり。

立派な大黒柱や、大きな一枚板の天井、大川の優れた木工技術を活かした欄間の飾りなどなど、見どころ満載でした!

いよいよ準備開始!打ち合わせ・仕込み・会場セッティング

旧吉原家住宅の魅力を十分味わったところで、いよいよディナー準備の開始!

今回のディナーは、大川市内のツアーの締めくくりとして、ツアー参加者の皆さんに地元食材を使った料理を楽しんでいただくというもの。
ツアーでは、重要文化財の『筑後川昇開橋』の見学、地元の特産工芸品『大川組子』の体験、旧吉原家住宅を含む小保・榎津藩境のまちガイドツアーを行い、その最後に私たちがディナーを提供します。

敷地内に厨房スペースがないので、仕込みは屋外に設置した小屋で行います。

限られたスペースと設備ですが、料理人のみなさんからは、どんな環境でもクオリティの高い料理を提供するという気迫が感じられました。

みんな真剣ながらも、時々楽しそう。
小川シェフも「キャンプみたい」と楽しんでいました。

サービスチームは蔵の中をセッティング。

壁際には大川組子のパーテーションが置かれ、とってもおしゃれな雰囲気。
柔らかな光に照らされた組子が織りなす印影が、蔵の中のムードを高めてくれていました。

地元食材をふんだんに使用!今回のメニュー紹介

今回は、ディナーで提供したメニューをあますことなく教えちゃいます!

お料理に地元食材を使っているのはもちろんのこと、ソムリエの園部さんのチョイスで、一品一品に地元ゆかりのお酒などを使ったアルコールドリンクをペアリングしました。

左から、生姜酢/庄分酢、ASAHA ROSE 2022/SHINDO WINES、CatWalk シャルドネ 2021/久住ワイナリー、Tasogare2022 /ワタリセファーム、純米酒/若浪酒造、Qdamonあまおう/若浪酒造

【アミューズ・ブーシュ】筑後川のうなぎとフォアグラのテリーヌ

お酒でマリネし、低温で火入れして固めたフォアグラのテリーヌに、白焼きにした筑後川のうなぎをのせています。

大川市を流れる筑後川は天然うなぎがよく穫れる場所だそうです。

合わせるお酒は『生姜酢のシャンディガフ』。
大川市で300年にわたって手作りでお酢をつくっている『庄分酢(しょうぶんず)』さんの『生姜酢』とビール(マルエフ)を合わせたカクテルです。

生姜酢はさわやかさとともにハチミツの甘みもあり、さらにうなぎとフォアグラのコクに合わせるために、まろやかでコクのあるマルエフを選んだそう。

ソムリエさんと言うとワインに関わる仕事というイメージがありますが、ワイン以外のお酒を選んだり、カクテルを作ったりもするんですね!

【オードブル】大川の醤油で作った醤油麹でマリネした有明海のスズキのタルタル

地元で作られた醤油を小川シェフが自家製で醤油麹にし、大川市に接する有明海で穫れたスズキをマリネしました。

お酒は、大川市の近隣の朝倉市というところにある『SHINDO WINES』さんの『ASAHA ROSE 2022』をペアリング。

福岡は巨峰の名産地だそうで、今回のワインは大分県との県境にあるうきは市産の巨峰を使ったロゼワイン。

ナチュラルなつくりで、フルーティーさ、ベリー系のフレッシュな香り、かつうまみもしっかりあるのが特徴。
酵母のような香りも感じるので、麹と相性がよいと考えて選んだそうです。

【スープ】なんぶ農園のブロッコリーとマエビのポタージュ

大川市にある『なんぶ農園』さんで穫れたブロッコリーを使い、ジャガイモとともにポタージュに。
上には有明海の特産であるマエビをポッシェしたもの(ゆでたもの)をのせています。

【魚料理】クチゾコのムニエル かすみくろ酢のブールブランソース

有明海周辺では舌平目のことをクチゾコと呼ぶんだそう。
これをムニエルにし、庄分酢さんの『かすみくろ酢』という米酢と、バターを合わせたソースをかけています。

ワインは大分県にある『久住(くじゅう)ワイナリー』さんの『CatWalk シャルドネ 2021』。
味や香りの特徴は、酸味、濃密なコク、フレッシュかつ華やかで樽の香りがするというもの。
ソースに合わせてこのワインを選んだそうです。

【肉料理】豊作ファームの和牛の日本酒ポトフと有明のり『紫彩』

大川市のお隣、柳川市にある『豊作ファーム』さんの和牛を塩でマリネし、大川市の『若浪酒造』さんの日本酒で煮込みました。

日本酒がほのかに香る和テイストのお料理なので、『アリアケスイサン』さんの有明のり『紫彩』を添えて。

紫彩は、板のりではなく素材そのままの形が特徴ののりです。
板のりにするにはのりを裁断して形成する必要があるそうですが、紫彩はのりをそのままの形で乾燥させるので、うまみや栄養分も失われづらいんだそう。

お客様からも「のりのいい香りがお肉に合う!美味しい!」という感想が多く聞かれました。

こちらのお料理には、2種類のお酒を合わせました。
1つは、料理に使ったのと同じ純米酒。

もう1つは、北九州市にある『ワタリセファーム』さんの『Tasogare2022』。
メルロー、カベルネフラン、アルモノワールという3種類のブドウをブレンドした赤ワインです。
園部さんによると、まろやかかつじんわりと柔らかく、優しさを感じるような味わいは、和牛の甘みに合い、
カベルネフランの青さのある風味は、のりとぴったりとのこと。

【デザート】楽農ファームたけしたのあまおうのキャラメリゼとムース

『楽農ファームたけした』さんのあまおうをふんだんに使ったムースに、イチゴソース、さらにキャラメリゼしたフレッシュなイチゴをのせたイチゴづくし。

こちらには、若浪酒造さんの『Qdamonあまおう』をペアリング。
イチゴリキュールと日本酒を合わせた甘いお酒です。
イチゴづくしのデザートということで、お酒もイチゴで合わせたそうです。

パンやコーヒーも地元のものを

食事中に提供したパンは、会場と同じ地区にある『とあるパリの街角パン屋 パリ・モンスリー』さんのもの。
食後は、大川市内にある『あだち珈琲』さんの、コロンビア ロスノガレス農園のコーヒーを提供。

大川市周辺や九州の「おいしい!」を集めたディナーとなりました。

また、園部さんは「白ワインと赤ワインの雰囲気をノンアルコールでも楽しんでいただきたい」と、さらにノンアルコールのオリジナルドリンクも2種類用意してくれました。
ぶどうジュースをベースに、福岡ということで特産の『八女茶』を合わせています。

白は白葡萄ジュースに、八女茶の深蒸し茶、熊本の特産である柑橘『不知火(しらぬい)』の自家製陳皮(乾燥させたもの)、レモングラス、トマトウォーター、レモン汁、海塩を合わせたもの。甘味の中に塩味を感じられるドリンクに。

赤は赤葡萄ジュースに、春摘みのやぶきた紅茶、ベリー、ハイビスカス、ローズヒップ、スターアニス、ブラックペッパー、シナモンを組み合わせ、隠し味にはマグロ節も使っています。
多種多様な素材の味が感じられ、複雑ではあるものの、バラバラというわけではなく、とっても面白い!

とても気になったので、どんな考え方でこのドリンクを作ったのか園部さんに聞いてみました。

ワインの香りを分解すると、うまみ、酸味、タンニンの渋みに大きく分けられるのですが、うまみはマグロ節、ハイビスカスやローズヒップは酸味、タンニンは紅茶といったように、同じジャンルの風味を組み合わせることで、一体感が生まれるそうです。

奥が深くて面白い!

園部さんは「ノンアルの面白さやペアリングの楽しみ方も知ってもらえたらいいな」と話していました。

ドリンクの詳細をもっと知りたい方は、園部さんが書いてくれた記事も読んでみてください!

「お客様に喜んでもらえて、大成功でした!」~みんなの感想~

約2時間のディナーは、なごやかな雰囲気で大盛況のうちに終了。
ツアー参加者だけではなく、大川市の市長様をはじめ、地元の生産者さんなども来て下さいました。
ツアー参加者には外国の方が多かったのですが、通訳の方を通して地元の方とも交流している様子が見られ、美味しい料理を囲んではじめましての人同士がつながっている様子が素敵だなと感じました。

最後に、調理・サービス・ソムリエを務めた皆さんに、今回の感想を聞いてみました。

小川シェフ

今、この地ではまちおこしの取り組みが進んでいます。
今回このような形で、まちの文化財を活用したディナーイベントを開催することで、地元の方にも、このまちでこんなことができるよ!と伝わったのではないかと思います。

イベントにはまちの保存会の方など、「このまちをよくしたい」と思っている方が集まってくれたので、こちらもとてもやりやすい雰囲気がありました。

また、nocsとしてもいつものメンバーに来てもらってスムーズにできたし、料理、ワインペアリング、サービスもとても良くて、お客様にも喜んでもらえ、大成功だったと思います!

【高橋さん】

このような形で地方に来るのは3回目だったんですが、これまでは食事する場所がテントだったので、今回は建物の中で召し上がっていただけたことがよかったです。
より実際に近い形でお客様に召し上がっていただき、反応も間近で見られたので、とても意味のあるイベントだったと思っています。

福崎さん

日本にはその土地土地で素晴らしい食材や素晴らしい建造物があることを、今回のイベントを通して改めて実感しました。
『食』を通して、お客様にもその素晴らしさを伝えることができたと思います。

今回のようなnocsの活動を通して、これからもたくさんの方々に日本の良さを知っていただける活動をしていければと思いました。
このような経験をさせてくださった小川シェフには大変感謝いたします。

園部さん

日本ワインは僕の得意分野であり、地元の良いワインを知ってもらいたいという想いもあって、九州・福岡にスポットを当てたペアリングにしました。
お客様からは「地元だけど知らないワインがあった!知ることができて良かった!」といった反応をいただきました。
また、普段からワインを飲み慣れている方にも、日本ワインの美味しさを知ってもらえたようで良かったです。

編集後記

最後までお読みいただきありがとうございました!
nocsメンバーでライターの江戸しおりです。

11月にnocsに加入し、小川シェフから「イベントがあるから来てよ!活動レポート書いてほしい!」と言われて、今回初めてnocsの活動に参加しました!

今回のイベントでまず驚いたことは、その環境の過酷さ(笑)
料理人がイベントにお呼ばれするときは、設備の整った快適な厨房が用意されているものだと勝手なイメージを持っていたので、屋外の簡易的な厨房で調理をしている姿を見てとてもびっくりしました!

しかし、限られた設備にも関わらず、さまざまな食材をさまざまな調理法を用いて繊細に仕上げている様子にまたびっくり!

「まな板がない!」「電気が消えた!」とバタバタしながら調理している様子と、出来上がった美しい料理のギャップが大きすぎて笑っちゃうくらいでした。

そして、そんなプロのお仕事を間近で見ることができて、早速nocsの楽しさに魅了されてしまいました。

と感動していたのもつかの間、なぜか私もサービスのお手伝いをすることに(⁉)
私の担当は、取材とこのレポート記事作成のはずだったのにまたまたびっくり!

事前に「ちょっと手伝ってほしい。アシスタント的な感じだから大丈夫!」と軽い感じで言われてはいたのですが、サービス服にしっかり着替えて、お料理を出したりお皿を下げたり、お水を注いだり、結構がっつりやらせていただきました(笑)

普段料理人やサービス・ソムリエとして活躍している皆さんと一緒にディナーを提供するなんて、本当に緊張してずっと手が震えていたし、足を引っ張りまくりましたが、そんな予定外のこともとっても楽しいと思える、初めてのnocs活動でした!

地方創生シェフとしても活躍する小川シェフは、全国各地でレストランなどのコンサルティングを行ったりしていて、今回のように地方でのランチ・ディナーイベントに招かれることもしばしば。
サポートとしてnocsメンバーが同行することもあり、とても貴重な経験ができます。

「nocsって楽しそう」と思った方は、ぜひぜひ参加してください!

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コメント

  1. ありがとう。
    さすがプロ!

  2. ご同行させていただきありがとうございました!
    イベントに関わらせていただくのも、その後振り返り記事を書くのもとても楽しかったので、また機会がありましたら是非ご一緒させてください!
    今後ともよろしくお願いいたします。

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